税理士への依頼要否を考える

納税は国民の義務であり、本来はご自身で対応するのが原則です。個人分野は近年この原則に立ち返っている印象があります。特に個人の方が使用されることが多いe-Tax Web版の完成度は高いです。

一方で、相続税は財産評価というプロセスが入り、所得税とは異なる複雑さがあります。85%以上の方が税理士に依頼されているのが実態です。会社が行う法人税に次ぐ割合であり、20%程度の個人事業主の方等が行う所得税よりもだいぶ高いのが現状です。

税理士関与割合
年度令和2年度
(2020年度)
令和3年度
(2021年度)
令和4年度
(2022年度)
令和5年度
(2023年度)
令和6年度
(2024年度)
所得税21.1%21.0%20.4%20.4%20.4%
相続税86.1%86.1%85.9%86.3%86.5%
法人税89.4%89.5%89.5%89.8%89.8%

ご自身で対応するか税理士に依頼するか考える際は、以下の3軸で検討することを勧めます。

①残り時間
②制度上の難易度
③対応に要する労力

残り時間

相続税の申告・納税の期限は亡くなった日の翌日から10か月です。受任する税理士の感覚としては、申告まで6か月を切るとやや余裕がないと感じ、3か月を切ってしまうとそもそも対応し切れるか身構えます。

申告期限まで3か月を切った状態では自身では試さず、至急縁のある税理士か、最寄りの税理士会支部へ連絡して税理士の紹介を依頼しましょう。

さいたま市桜区、浦和区、南区、緑区、中央区は浦和支部です。さいたま市役所の近く、和菓子の足立屋さんの上にあります。

制度上の難易度が高いもの①:特殊な制度を利用している

相続時精算課税制度、相次相続のような特殊な制度を利用すると税額の算定が複雑化します。税理士に依頼したほうがよいでしょう。

「相続時精算課税」は生前贈与に紐づく制度です。

10年以内に2回の相続が発生した方を対象にする「相次相続」は「相続税を払った」ことが前提である点に留意ください。イメージは3世代間の相続です。平均寿命を前提にすると一般的なケースではありません。

制度上の難易度が高いもの②:非上場株式

相続税上の非上場株式評価の特殊性として、評価手法が決まっている点が挙げられます。この点は法人税と異なります。財産評価のなかでも複雑なものであり、税理士へ依頼することを勧めます。

通常の企業価値評価とは異なり、相続税専用の算定であることに留意ください。

制度上の難易度が高いもの③:不動産

子への相続である「二次相続」において不動産がある場合には税理士への依頼を勧めます。旧浦和市で戸建てを相続される場合は、同居されている場合を除き相続税が発生する可能性が高く、変形土地等の評価を通じて評価額を圧縮することに価値があります。

一方で、配偶者が残っている「一次相続」においては配偶者の軽減措置が1億6千万円と大きく、変形土地等の評価を通じて評価額を圧縮することに価値がない可能性があります。

登記簿と固定資産課税台帳、路線価の3つを読みこなせればご自身での対応が視野に入ります。

対応に要する労力が高いもの①:複雑な家庭

養子や別宅の子が存在する場合など、想定外の法定相続人が出てくる場合があります。法定相続人の確定は戸籍謄本を丹念に読み解くほかありません。

知らなかった兄弟へのアプローチは先方の感情面から遺族が対応したほうがよいでしょう。

対応に要する労力が高いもの②:高価な動産

代表例である車両やピアノであれば中古市場をWebで調べることで対応できます。

刀剣、書画、骨董は悩むことになるでしょう。これは税理士も評価できません。趣味で集めていたものの場合、鑑定評価に出すのも気が向かいないでしょう。

動産関係は明文規定が弱く、税理士も歯切れが悪くなります。納税者がリスクを負わざるを得ない資産と感じます。

対応に要する労力が高いもの③:相続税申告そのもの

申告は財産評価のみでは終わらず、評価結果を「申告書」にまとめる必要があります。

2026年4月時点では、e-TaxのWeb版は相続税に対応していません。ダウンロード版は操作性が低く作業負荷が高いです。私は相続税申告では利用していません。

対応としては「相続税の達人」などの市販ソフトを3万円程度で購入する選択肢もあります。

ご自身で対応される際の考え方

上記を参考に考えていくと、ご自身で対応されるケースは一次相続で遺産が預貯金、生命保険、上場株式のみ、といった場合が多くなると思います。これらは財産評価の論点は少ない一方で、申告そのものの労力は変わりません。やってみたものの、手に負えなかったというリスクは残ります。

このリスクへの担保として、亡くなってから3か月間と時間を区切って試して、難しければ税理士に依頼することを勧めます。半年残っていれば複雑なものを除き受任してくれる税理士は多いと思います。

当事務所では申告まで180日(約6か月)を切っている依頼については加算をお願いしています。

ご自身で対応する際の参考

ご判断の結果、ご自身で申告される場合は以下の国税庁の資料を読むところからスタートです。

国税庁は解説を丁寧に作りこんでいます。国税庁の資料に依拠して進めましょう。